捨て色
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    一昨日の夕食後のことです。

    「この仕事をしていると、時々、良心が痛むんだ。」 

    と、デザイナーの息子が言い出しました。

    聞き捨てなりません。

    「どうして?」


    「わざわざ廃棄するために作る商品があるんだよ。

    『捨て色』と言って、同じデザインでも

    「こんな色、誰が着るんだ!」っていう色の服を

    20%は作らなければいけないんだ・・・。

    エコと真逆だよね。」


    「へぇ、何故なの?」



    「ピンクやベージュの売れ筋だけの商品を並べてもダメなんだよ。

    それらが売れるためには、コントラストとして

    変な色の服も投入するのさ。

    そうすると品揃えが多く見えて、

    お客さんも手に取りやすいんだよ。


    でもさ、資源が、環境が、とか言いながら

    こんな無駄を作り出していていいのか、っていつも悩むんだ。

    アパレル業界全体なら、何十億か何百億の無駄金だよ。

    あ〜、誰か僕のこの悩みを解決してくれないかな。」


    ビジネス的に考えれば、

    違うデザインを多品種投入するより、

    同じデザインで色数を増やした方がリスクが少なくて済みます。

    それに、無地で原反を持っていれば、

    店頭での売れ筋の色を素早く増産することもできます。


    そういえば、「捨て色」はアパレルに限らず、化粧品など、

    他の分野にも見られます。



    これは、もしかしたら「マーケティング手法」の一つかもしれません。

    で、その意味は何?

    親子で「あーでもない、こーでもない」とディスカッションが始まりました。


    私曰く「何事も「遊び」が必要でしょ。

    洋服でも、腕周りぴったりに作られたら、

    腕が動かせなくて着られないけど、数センチの遊びがあって初めて

    楽に動かせるし。

    まあ必要悪みたいなものではないの。」

    息子曰く「あ、それ聞いて『パレートの法則』を思い出した!」


    急に顔が明るくなり、一人で納得した様子。

    「20%の売れ筋を担保するために、20%の捨て色を作る、か!

    そうか、これは構造的な問題なんだね。

    オレが一人で心を痛める必要はない訳だ。

    捨て色の商品も廃棄しなでいで、途上国に無償で寄付すれば

    無駄にならないし!!

    ありがと!心が晴れたよ。」


    そう言うか早いか、鼻歌を歌いながら

    パタンと自室のドアの奥に消えていきました。


    「捨て色」は社会が円滑に回るための構造的余剰とでもいうのでしょう。

    この現象は自然界にも見られます。

    話は飛びますが、

    以前「生命の神秘」いうドキュメンタリーで、

    何億の精子群がひとつの卵子めがけて競争する映像を目にしました。

    進むにつれ、次々と脱落者が出、卵子を前にした時には、

    わずか数個の精子しかいないのです。


    どれも疲れきって、鞭毛の動きも鈍くなっています。

    それでも、どれか一つの精子が力を振り絞って

    巨大な卵子の膜を破ろうとします。

    すると、その瞬間、今までライバルだった他の精子が一転して協力し合い、

    その精子を押して卵子への侵入を助け始めたのです。

    その代償に、彼らは力尽きて死んでしまうのです。


    それは、とても感動的で、尊い画像でした。

    見ていて涙が止まりませんでした。

    そして、

    ひとつの精子を生かすためには、脱落していったあの何億の精子たちが

    必要だったのだ、と感じたのでした。



    必要なものを活かすための無数の犠牲的存在、

    それは決して無駄ではなく、奥深い「生命の仕組み」なのでしょう。

    だからこそ、生まれた命は尊いのですね。










    posted by: shigemi11 | - | 13:08 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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