イギリス 旅随想 ―エジンバラからロンドンまで  その1 
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     夏休みを利用して、夫婦でイギリスに行ってきました。

    オランダのスキポール空港からエジンバラまでは

    1時間のフライトですが、時差は2時間。

    現地時間で3時少し前にエジンバラ到着。

    とりあえずホテルに荷物を置いて、市中に繰り出すことに。


    ところが、「ハ〜イ!」とやってきたタクシーの運転手の

    左腕を見て、びっくり。

    手首までびっしりとタトゥーが入っているのです。


    その後、市中に出てからも、

    太ももの内側にタトゥーを入れた若い女性、

    意味不明の漢字を二の腕に入れた青年、

    錨のような模様を腕に入れたおじいさん、

    とかなり頻繁にタトゥーを入れた人を見ました。

    見れば、日本で言えば理髪店のような感じで、

    Tatoo salonがあちこちにあるのです。

    格式ある古い街並みに何だか似つかわしくありません。

    「変わった街だこと。」

    これが私たちのエジンバラ第一印象でした。



    ともあれ、エジンバラはスコットランドの首都です。

    こういうと「は?」と首をかしげる人がいます。

    イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと

    いう「国」が連合している王国です。

    ですから首都があって当然なのです。

    もちろん「国旗」もあります。

    スコットランドは青字に白の斜め十字です。

    イングランドは白地に赤の十字、アイルランドは白地に赤の斜め十字。

    この3つの国旗が合わさって「ユニオンジャック」になります。

    旗は「ユニオン」(=連合)ですが、

    当然ながらそれぞれの国は「腹の中では」決して連合していません。


    とりわけ、スコットランドは昔からイングランドの度重なる侵入に

    抵抗して戦ってきた歴史があります。

    18世紀の半ばにも大規模な独立運動があり、

    イングランドへの反抗心(や対抗心)は半端ではありません。


    それは遠い過去の話ではなく、現在も続いているように感じました。

    街にはどこも「スコットランド魂」が横溢しています。

    街のほぼ中心に、スコットランドが生んだ大詩人、

    サー・ウォルター・スコットの銅像があり、

    それを巨大なモニュメントが被っています。

    周囲は公園になっており、市民が思い思いに安らっていますが、

    公園の柵のすぐ外側では朝から晩まで、

    民族衣装を着た男性がバグパイプを吹いているのです。

    (後ろに見えるのがスコット記念塔)

    その音色は街中に響き渡り、いやでも「ここはスコットランドなのだ!」と、

    人々の意識に染み込んできます。


    私たちはエジンバラに来たからには「エジンバラ城」に行こう!

    と向かったのですが・・・。



    街を見下ろすようにそびえるエジンバラ城の外観を見たとたん、

    何だか足取りが鈍くなってしまいました。

    所々崩れ落ち、戦火で焼かれたような黒い跡、

    まるでまだ戦いが続いていて、鎧のぶつかり合う音が聞こえて

    きそうな気がしたのです。

    折しも空が急に灰色になり、雨が降ってきました。

    「こんなおどろおどろしい場所はやめよう」と、私たちは再び坂を下りました。


    すると、どうしたのでしょう、通りには急に人が溢れています。

    もともと8月のこの時期は、エジンバラ国際フェスティバルと、

    そこには参加できない人達が無審査で行う「フリンジフェスティバル」が

    開催されており、世界中から大勢の人がこの街にやって来ます。

    人はどんどん増え、やがて身動きができなくなりました。



    しばらくすると警官隊が出て、お城に通ずる道を封鎖し、

    交通整理を始めたのです。

    「何があるのですか?」と警官の一人に聞くと、

    「これからMilitary Tatooが始まるんだ」と答えが返ってきました。

    ミリタリー? タトゥー?

    何だかさっぱり分かりません。

    若い警官が売っているプログラムを6ポンド(約1000円)で買い、

    早速開いてみると・・・。


    「ミリタリー・タトゥー」とはどうやら軍楽隊のパフォーマンスショウ

    らしいのです。

    お城の前庭でこの時期に繰り広げられる、それは盛大なイベントだそうです。

    「タトゥーって刺青じゃないですか?」とそばにいた婦人警官に聞いてみたところ、

    彼女は笑って「タトゥーには二つの意味があるのよ。

    ここでは軍楽隊という意味ですから」と答えてくれました。

    やれやれ、です。


    ふと気づけば、時計はもう午後9時近く。

    緯度の高いエジンバラではまだ黄昏です。



    時折かもめが飛んできて、海が近い街であることに気付かされます。

    しばらく目抜き通りを歩き、タータンチェックのお店などを

    覗いているうちに、午後11時近くになってしまいました。

    ホテルに戻ろうとバスに乗ったのですが、

    停留所をひとつ手前で降りてしまい、ホテルまで歩くはめに。


    市街地の端にあるホテルまでの道は、

    またエジンバラの別の顔を見せてくれました。



    まるで映画のセットのような、孤独で侘しい町並み。

    人通りもなく、中華料理店とピザ店の寒々とした灯りが

    舗道を鈍く照らしていました。


    「鬼哭啾啾」。

    ふと、この地を守るために無念の最後を遂げた大勢の人々、

    ローマ兵に追われたケルト人やその前の先住民たちの憂いの囁きが、

    街を吹き抜ける風のように聞こえてくる気がしました。


    私たちはホテル近くのインド料理店の最後の客となり、

    部屋に戻って、ただひたすら眠りました。

    明日のために。


                            (続く)










    posted by: shigemi11 | - | 16:04 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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