イギリス 旅随想―エジンバラからロンドンまで その4
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    さて、翌日はエジンバラからマンチェスター行きの特急に乗り、

    途中オクスンホルムで乗り換えてウィンダミアに向かいました。

    いよいよスコットランドからイングランドに入ります。

    車窓から見える景色が急に牧歌的になりました。


    緑の草原に細かな紙くずのような白い粒粒が散らばっています。

    よくみると、羊でした。

    のどかな風景を楽しんでいるうち、ウィンダミア駅に到着。


    ウィンダミアは明媚な風光とお洒落な町並みで、

    国内外で人気のスポットです。

    リタイアした富裕層が来るせいか、

    「地代も物価も高くて」とタクシーの運転手がこぼしていました。



    ウィンダミアは、日本で言えば軽井沢のような感じの保養地です。

    町並みはどこをとっても絵になります。

    高価でお洒落な洋服や、アクセサリーのお店が多く、

    その前にリゾートウェアを着た滞在客らしい女性達が群がっていました。


    街のざわめきから少し離れたところが私たちのホテルです。



    貴族の館みたいでしょう(笑)。

    築150年の館で、手入れが行き届いた庭には緑があふれ、

    室内も華美な装飾はありませんが、

    上品で落ち着いた佇まいです。



    (これはテラス。ここまで食事を運んでくれます。)



    (室内。主人はここが気に入り、夜になると暖炉のそばでPCをいじっていました。)

    さすが三ツ星ホテル。

    スタッフもフレンドリーで、洗練されています。

    あまり居心地がいいので、午後はどこにも出かけず、

    ホテル内をぶらぶらしたり、おいしい食事を楽しんで過ごしました。

    ホテルの水道水も、柔らかくておいしく飲めました。


    さて、ゆっくり英気を養った翌日は、早朝から湖水地方へ。

    この辺はローマ時代からの建造物があります。

    この橋も、1300年前、ローマ人が建造したものです。



    ほとばしる水も綺麗です。

    (それでも主人は「日本の水のほうが澄んでいるな」と、チクリ。)

    あたり一帯に広がる田園風景は、本当にピーターラビットがひょっこり

    顔を出してもおかしくない位、ポター女史の絵本そっくりです。


     

    広告の看板ひとつないこの風景は、しかし、ナショナルトラストという、

    民間のボランティア組織によって維持されているのです。

    「自然」を自然のままに維持しようとする、

    英国人の強固な意思をそこに感じないわけにはいきません。


    ナショナルトラストは、19世紀末に司祭ら3人で、

    歴史的建造物や自然の保護を目的に設立されました。

    「ピーター・ラビット」の作者、ビアトリクス・ポター女史が、

    この湖水地方の土地をナショナルトラストに託したため、

    私たちは現在も昔ながらの風景を楽しむことができるのです。

    この広大な土地を購入したポター女史の財力と見識に

    限りない敬意を払いつつ、寄付でこの組織が維持され続けていることに

    私は素直に感心してしまいました。


    湖水地方といえば、ワーズワース。

    彼の「水仙」の詩を思い出します。

    彼が住んだ家も近くにありました。

    彼がよく通った教会の中庭が "Daffodil Garden"として一般公開されています。



    ("Daffodil Garden"の入口。手前のピンクの帽子は私です。)

    一帯はワーズワースやカーライルなど、いかにもロマン派が好みそうな

    景観に溢れています。



    (教会の横から、”Daffodil Garden"の前を流れるせせらぎ。左にあるカフェから

    せせらぎを見下ろすと、清らかな流れに魚が見えます。時間がゆっくり流れている

    空間でした。)


    さて、いよいよ湖水地方の入口ともいうべきケズウィックに辿りつきました。



    ここはちょうど湖水地方の要となる場所で、街も賑わっています。



    ケズウィックは(大体イギリスはそうですが)街の要所要所に

    ハンギングフラワーが飾られ、窓辺にも色鮮やかな花があり、

    歩くだけでも楽しい街です。

    お昼時はどこのお店も観光客で溢れかえり、

    なかなか目当てのお店に入れませんでした。

     

    この辺には「カンブリア」という地名がある事からも分かるように、

    地質的には氷河時代に遡る地域です。

    ですから、ローマ人が来る前から栄えた文明がありました。

    このストーンサークルもその一つです。

    飛鳥の石舞台を彷彿とさせる遺跡で、そばにいると

    何故か気分がおおらかになってリラックスしてきます。

    訪れた人達もほんわかした顔をしています。

    私たち夫婦もそれぞれ写真を撮りました。

    ポーズに二人の性格が現れていますね(笑)。



    ウィンダミア、グラスミア、など、「ミア」はケルト語で「水」や「湖」を

    表すそうです。

    そのウィンダミア湖で、クルーズを楽しみました。



    船上からパチリ。

    とにかく天候が変わりやすい。晴れたと思ったら雨が降り出し、

    レインコートを着て歩き始めるとやむ、その繰り返しです。



    丘の上からの絶景。

    雄大です。ナショナルトラストのおかげで、看板等、人工的なものは

    一切ありません。この管理能力はすごいです。



    おそらくは氷河が削った跡なのでしょう。

    カール状に刳られた地形に丈の低い草が生えており、時たま山羊が通るのか、

    草むらのあちこちに山羊の糞が落ちていました。


    湖水地方。

    イギリスの誇る景勝地でした。

    その美しい自然を丸一日堪能した私は、

    ふと、ある錯覚に襲われました。

    「手付かず」の自然のはずなのに、

    なぜかそこに「人工的なもの」を感じてしまうのです。


    自然は変化していきます。

    その変化を食い止め、いつまでも美しいまま保とうとする試み自体が、

    実は不自然なのかもしれません。


    でも、今は国のドル箱観光地(笑)。

    湖水地方はこれからも美しく「管理されつづける」ことでしょう。


             (つづく)

















    posted by: shigemi11 | - | 11:17 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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