イギリス旅随想−エジンバラからロンドンまで その7
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    シティ・オブ・ロンドンについて、
    「金融資本主義が生まれた場所をこの目で見てやろうじゃないか」と、
    渡英前、まるでロスチャイルドの本拠地にでも乗り込むかのような意気込み(笑)で、
    主人が言っていました。
    「ツーリスト風情がちょっと立ち寄ったぐらいで、その奥の院がわかる訳ないでしょ」と
    私は乗り気ではなかったのですが、結局行くことに。

    シティは、冒頭の写真を見ればお分かりの通り、
    高さ制限のあるロンドンにあって、制限高度を超えたビルが林立しています。
    なぜこんな事が可能なのでしょうか?
    実はそこにこのシティの「秘密」があります。
     
    シティ・オブ・ロンドンは、ザ・シティとも呼ばれ、広さが約1マイル四方の区域で
    下の地図を見れば分かるとおり、ロンドン市のほぼ中央に位置しています。

     
       (中央の赤い箇所がザ・シティ)

    ここは、イギリス国内でありながらイギリスではなく、
    ロンドン市内にありながらロンドンに属さず、
    自治権をもっている、いわば独立国のような例外的な地域です。

    ですから、写真のように、ロンドン市の法律を無視した建物がいくらでも
    建てられるのです。
    警察も、ロンドン警視庁(スコットランドヤード)とは別に、
    シティだけの警察があります。
     
     シティの警察署前にあるポール
     
    ここは、ロンドン全体を統括する市長(Mayer of London)とは別に、
    独自に市長(Lord Mayer of the City of London)がいます。
    エリザベス女王でさえ、シティを通るときはその市長の許可を得る
    儀式を経なければなりません。
     
    シティには、現在ロンドン証券取引所やイングランド銀行、ロイズ本社等が
    置かれ、19世紀から今日に続く一大金融センターとなっています。
    ちなみに国際金相場の価格は、ここのどこかにあるロスチャイルド家の一室で
    決めている、と言われています。
     
    シティに行くには地下鉄の、その名もバンク(銀行)という駅で降ります。
    駅から地上に出る階段の踊り場の壁を見て、
    私たちは思わず「ギクッ」としてしまいました。


    恐ろしい形相のドラゴンが、2頭でお出迎えです。
     
    地上に出るとこんな感じ。
     
    日曜日のせいもあって、金融街はビジネスマンは見当たりません。
    平日でもシティを訪れる観光客なんてあまりいないでしょう。
    閑散として、ロンドンの他の場所とは大違いです。
    右の写真はイングランド銀行です。

     

    ひときわ立派な建物は、旧王立両替所です。
    このローマ風の建物は、柱といい、壁面といい、神話や聖書に題材を取った
    見事な彫刻で覆われています。

     旧王立両替所の正面

    ピンクのジャケットの人物は私です(^^)。
    全体の大きさが分かりますね。大変壮麗です。
     
    しかし、ここも今では内部は外国の高級ブティックのショッピングモールとなっています。
    イギリス経済の現状を物語って余りあります。

    私たちはさらに、この自治都市ザ・シティの行政中枢、ギルドホールに足を伸ばしました。
    ギルドホールの正面入口には、あのドランゴの紋章が。

     

    2頭のドラゴンは、イングランドの「国旗」であるセント・ジョージ旗を持ち、
    翼にもセント・ジョージ旗が描かれています。
    写真でははっきり見えませんが、ドラゴンと旗の下にラテン語が書いてあります。

      DOMINE DIRIGE NOS (主よ、我らを導き給え)

    確かに、ここはロンドンではない、別の雰囲気を感じます。

    ギルドホール敷地内にあるギルドホールヤードに入ったとき、
    さらにそれを強く感じました。

     ギルドホール
    (この前庭が広いヤードになっています。)
    まるで中世の世界に迷い込んだような静謐な空間。
    私たち以外、誰もいないのです。
     
    実はこのヤード、ローマ人が入植した時期には、円形競技場だったのです。
    そう、猛獣と戦うグラディエーター達が活躍したり、公開処刑が行われた場所だったのです。

    そうか、「シティ」はいまだに「ロンディニウム」(ローマ時代のロンドンの呼び名)なのだ!
    ローマ人の夢が眠る、誇り高きシティ・オブ・ロンドン。
    不思議な違和感を、私は勝手にそう解釈しました。

    そして、シティを一歩出れば、休日の街はご覧のとおり。


    カフェには人が溢れ、いつものロンドンがそこにはありました。



    夕闇迫る頃、今度はかねてから予約してあったテムズ川ナイト・クルーズへ。



    面倒なことに「ドレスコード」があるのです。

    こういう時、男性はジャケットとネクタイがあれば
    何とか様になりますが、女性は困ります。
    私は捨ててもいいつもりで持っていったワンピースを着ました。
    (まあ、とにかくそれらしく見えればいいや、という気持ちで。)
    中にはベアショルダーのイブニングドレスや、タキシードの人がいて、
    「さすが!」と思いました。

    やがて、夜の帳が落ち始めます・・・。


    いよいよ船が動き始めました。

    窓から見える川岸のビルは、船から見られる事を想定しているような
    イルミネーションが一斉に灯ります。
    川岸も、灯りのチェーンで華やかに縁どられ、
    夕闇に沈む建物のシルエットを引き立てています。

    「あれがテートモダンよ」、「あ、シティだ!」
    乗客の歓声がワイングラスの響きあう音に混じって
    聞こえてきます。



    途中で7つほどの橋をくぐりましたが、
    どの橋も赤や青、白、黄色、オレンジと、橋ごとに意匠を凝らした照明で飾られ、
    見飽きることがありません。
    まるで、ショーを見ているようです。

     

    ロンドンをくまなく観光資源として活用しよう、という
    巧みで貪欲な戦略性を感じてしまいます。

    東京の隅田川でも、天ぷらの出る屋形船ばかりでなく、
    こういうクルーズ仕立ての観光船を就航させたら、
    若い層に受けるだろうなぁ、などと勝手に想像していました(笑)。

    本当にため息の出るような、ロマンティックなクルーズでした。
    予約してくれた主人に感謝です。

    かくて、ロンドンの夏の夜は更けていきました。



    次回「イギリス旅随想」の最後は「比較文化的考察」をしたためます。








     
     
    posted by: shigemi11 | - | 20:14 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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