日本型「ものづくり」の限界を打ち破るコニカミノルタの挑戦
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    しばらくぶりの投稿になります。
    今回はいつもと趣を変えて、ある企業の新たな試みを紹介します。
    これは日経電子版にも掲載されていた内容ですが、
    日本型「ものづくり」に欠けている要素を補って余りある大きな挑戦で、
    一人でも多くの方に読んでいただきたい、と思っています。

    それでは始めます。

    ○「スタートアップ」とは?

    2013年10月のある晩、ウィーンのホーフブルク城(冒頭写真)内には
    夜を徹して議論する「スタートアップ」企業の経営者たちがいました。
    ここは企業家、投資家の交流会「パイオニアズフェスティバル」の会場。
    コニカミノルタはその主要スポンサーで、この日は会場から協業のアイデアを
    募ったのでした。


    (熱気あふれる「パイオニアフェスティバル」の会場)

    ところで、「スタートアップ」とは何でしょうか?

    「パイオニアフェスティバル」の輪の中心にいた
    コニカミノルタ市村雄二執行役は答えます。
    「市場ニーズを明確にとらえて事業化するのがスタートアップ開発」で、
    従来のいわゆる「ものづくり」である「プロダクトアウト」に対して、
    「スタートアップ」は「マーケットイン」になります。

    「プロダクトアウト」と「マーケットイン」。
    この違いを認識すると、今までの日本の製造業には
    「マーケットイン」の発想が欠けていたことが分かります。
    良いものを作っていれば売れるという信念で高品質の製品を
    作ってはきたものの、販売には結び付かないという例を
    私たちはいやというほど目にしています。


         (コニカミノルタ市村雄二執行役) 

    例えば、こういう事です。

    コニカミノルタは長年ロボット技術に取り組んできました。
    しかし、このままではいくら良い技術でも世に出ることはありません。
     
    2014年に出資した米ナイトスコープ社は、「犯罪発生率を5割削減する」
    というミッションを掲げて警備ロボットの事業化を目指しています。
    同社は開発体制もセンサー技術などの将来的な進展を見越して、
    自前主義を廃し、世界中の開発動向をリサーチし、最善のものを取り入れる
    方式を採用しました。コニカミノルタはこのナイトスコープ社と協業することに
    しました。市村執行役は言います。
    「彼らのミッションをともに達成することでコニカミノルタの潜在力も生かせる」

    警備ロボットの開発というマーケットインの発想に乗ることで
    同社のロボット技術が生かせる、というわけです。

    「フェスティバル」の会場ではスタートアップ企業から「休む間もなく提案が舞い込む」
    と市村氏は苦笑しますが、
    「彼らの着眼点、スピード感はコニカミノルタからは生まれない」とも話しています。


    ○真のイノベーションを実現するには

    ある日、市村氏は当時専務だった現社長の山名昌衛氏から、
    「マーケットインの概念を社内に浸透させる方策」を託されました。
    内々に集められた5人の幹部は「イノベーションを起こすには、従来の取り組みとは
    非連続の挑戦をしないといけない」という危機感を共有していました。
    「スタートアップとの協業にとどまらず、スタートアップのような開発部門を作る」−
    熱い議論から次の展開が見えると、山名氏はすぐに経営会議に諮り、
    市村氏に体制作りを命じました。
    2014年2月に稼働した「BIC(ビジネスイノベーションセンター」がそれです。

    市村氏は、マーケットインの舞台を本社においても意味がない、と考え
    日米欧、中国、シンガポールの5カ所に部隊を配置しました。



    さらに、社内の研究開発部門と区別するため、中心メンバーは
    社外からスカウトするという徹底ぶり。
    それからわずか1年半。すでに介護関連システムなど86件の新規事業案件が
    動き出しています。
    BICが軌道に乗り始めると、社内の研究開発部門の社員の意識や行動に
    変化が出てきました。社内からも多くの技術提案が出てきたのです。
    まさに狙った通りの効果が出てきました。
    プロダクトアウトだけだった視点から、マーケットインの視点も併せ持って
    技術や製品の開発ができるようになったのです。


    ○日本の製造業の「パラダイムシフト」にむけて

    コニカミノルタの事例は伸び悩む日本の製造業に大きな示唆を与えてくれます。
    現代表執行役社長の山名昌衛氏の言葉を抜粋してお伝えしましょう。


        (山名昌衛 コニカミノルタ代表執行役社長)

    「日本の製造業は、パラダイムを変えて、新たなモノ作りの強さ追求するしか生きる道はない。
    そのためには技術を磨く従来の手法に加え、社会のニーズを探求し、
    社内外の技術を結集して最適な解を提供する「マーケットイン」の概念を
    取り入れなければなりません。

    これは「自前主義」を捨てるということで痛みを伴い、自助努力だけでは進みません。
    そこで社外からマーケットインにたけた人材をスカウトし、BIC
    (ビジネスイノベーションセンター)という組織を作りました。
    「社会のために何ができるか」から着手するお客様本位のモノ作りの醍醐味を、
    実際に社員に感じてほしかったのです。
    今後は刺激を受けた若い社員をBICに送り込み、新しいモノ作りを学んでもらいます。
    創業から受け継いできたモノ作りの精神は必ず守りますが、
    れ以外は何を変えてもいいと社員に伝えています。
    モノ作り復権のためにも、退路を断って変革をやり遂げます。」

    創業142年の名門企業の社長が、新たな成長シナリオを熱く語るさまは、
    読む者の胸に迫ってきます。
    山名社長は「日本のモノ作りが技術で勝って、
    ビジネスで負けたといわれることが悔しい」と語ります。
    これは日本の製造業にかかわる者すべての気持ちではないでしょうか。
    TPPも大筋合意となってきたなかで、日本企業も大きく変わらなければ
    生き残ることはできないでしょう。
    さまざまな方法が練られているとは思いますが、
    「スタートアップ」の精神とモノ作りの精神を融合し、
    プロダクトアウトとマーケットインの協業で成功を収めつつある
    コニカミノルタは良き先例となるのではないでしょうか。




     
    posted by: shigemi11 | - | 18:13 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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